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シリーズ「輝いている会員の姿」 東京支部 柴﨑 浩之さん

「共生社会の実現を目指して」

  私は、文部科学省の障害者学習支援推進室(注1)で働いています。文部科学省では、障害の有無にかかわらず、共に学び、生きる「共生社会」の実現を目指しており、当室は、そのための政策の一つである、障害者の「生涯学習」の支援を推進している部署です。「生涯学習」とは、一般には人々が生涯に行うあらゆる学習、すなわち、学校・家庭・社会教育、文化・スポーツ・レクリエーション活動、趣味など、様々な場や機会において行う学習を意味します。健常な方は、「生涯学習」を意識せずとも、当たり前のように行っていますが、障害者の「生涯学習」は容易ではありません。例えば、特別支援学校卒業後、大学進学に苦労されたり、身近に学びの場がないことを実感されたりした会員の方も多いのではないでしょうか。当室では、そういった課題を踏まえ、学校卒業後においても、障害の有無にかかわらず誰もが学べるように支援しています。

 私自身には、これまで大事な学びがありました。文部科学省への入省前の3年間、国立精神・神経医療研究センター(注2)で、当時、所長兼部長であった武田伸一先生(現理事)や研究部の方々にご指導いただき、筋ジストロフィーについて学びました。特に、microRNAという小さなRNAと筋ジストロフィーとの関連性について研究し、論文(注3)を海外雑誌のPLOS ONEで発表し、目標であった博士(薬科学)の学位を取得しました。残念ながら、「筋ジストロフィーの研究者になり、自身で治療薬を創る」という高校生のときからの夢は諦めることになりましたが、この3年間の学びをきっかけに、筋ジストロフィー専門の医師や研究者の方々との縁ができ、お酒を飲みにいく仲間もできました。また、自身の疾患についての理解がより深まったことで、日常生活の適切な自己管理にもつながり、今の生活を送る上での一助になっています。

 このように、学ぶことが人生において重要であることを実感し、筋ジストロフィー患者、障害者だけにとどまらず、男性、女性、高齢者、子供、外国人など、あらゆる人々が、誰でも学び、生きていける「共生社会」を実現したいという思いが生まれ、文部科学省への入省に至りました。

 学びは、知識を深めるばかりではなく、人生の充実につながり、自身の新たな未来を切り開くことができます。「共生社会」の実現は、難しい課題ではありますが、誰でも生涯に亘り学び続けられるよう、邁進していきたいと思います。

(注1)文部科学省 総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課 障害者学習支援推進室(http://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/gakusyushien/index.htm)
(注2)国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部(https://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r_dna2/index.html)
(注3)Characterization of a novel microRNA, miR-188, elevated in serum of muscular dystrophy dog model(https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0211597)