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令和4年度予算要望を厚労省へ提出

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筋ジス協会は、下にある「令和4年度厚生労働省予算編成に関する要望書」を厚生労働省へ提出しました。

 

令和3年6月21日

令和4年度 厚生労働省予算編成に関する要望書

一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会
代表理事 貝谷 久宣

 

 昨年から新型コロナウイルス感染症が流行する中で、筋ジストロフィー等の難病患者及びその家族は、特に不自由な生活を強いられています。それを改善するため、医療や介護関係者、厚生労省職員の皆様も大変な状況下で職務を全うされていることに感謝申し上げます。当会としては冒頭に新型コロナウイルス感染症に対する要望を、そして未来を見据え、第204回国会で成立した障害者差別解消法改正法や医療的ケア児支援法の趣旨も踏まえた要望をさせていただきます。すべての要望に先立ち、コロナ対策の財政出動と行財政改革の中、医療・福祉制度が後退することのないようにご配慮をお願いいたします。

 

新型コロナウイルス感染症対策に関する要望
・基礎疾患のある患者だけでなく、その家族もコロナワクチン予防接種の優先対象に含めていただきたい。
・福祉事業所などでの社会的検査体制(地域でのPCR検査等)を拡充していただきたい。
・介助している家族が感染した時の患者の対応に万全を期していただきたい。
上記、三点の要望とともに、併せて貴省が進めている介護福祉職員(訪問介護従事者含む)へのワクチンの優先接種も速やかに実施することで、患者・家族の不安を解消していただきたい。

 

1.入所者のQOL向上
1) 療養介護病棟への人員の増配
療養介護病棟入所者のQOL改善のための人員の増配をお願いしたい。感染症対策のための面会禁止、外出・外泊禁止が長期に及んでおり、また、病棟はこれまで以上に人手不足が深刻化し、入所者、職員ともに大きなストレスがかかる状況下にある。更に、人手不足によるリハビリ回数の減少で、入所者の拘縮が進行している。閉鎖された空間での生活には指導員や保育士等が果たす役割も大きい。現場をご視察し実態把握の上、人員の増配を図っていただきたい。
2) ICT機器を活用できる人員の配置
コロナ禍で家族との面会を含め外部の人とのコミュニケ―ションの機会が完全に断たれ、精神疾患になる者もいる。各療養介護病棟ともICT環境は整っているものの、指先などが辛うじて動く筋ジストロフィー患者は、介助なしで機器の操作ができない。これを踏まえ、ICT機器の活用ができる指導員や保育士等の人員を増やしていただきたい。

2.災害時の対応
1) 人工呼吸器利用者の生命保護
停電時に人工呼吸器利用者の生命を保護するため発電機・バッテリーなどの補助と、関係機関を包括した連絡体制、受入れ先の整備をお願いしたい。

3.患者・家族のQOL向上
1) 障害者総合支援法等の適正な実施
(1) 地域格差の是正(福祉サービス)
障害福祉サービスには人が生活する上で不可欠なものが多い。障害者が住んでいる地域により受けられる障害福祉サービスや地域生活支援事業に格差があるのは著しい不平等である。是正を強くお願いしたい。
(2) 居宅系サービスの適用拡大
地域でヘルパーによる支援が必須で生活する患者が増えている。就学、就労、入院などライフステージの変化にあわせた支援が受けられるよう、重度訪問介護等の従来の制度の充実と適用拡大をお願いしたい。
(3) 在宅就労者への支援
症状が進行し、通勤が困難となった後も就労を希望する患者が多数いる。現状の就労支援の強化や必要なICT機器の購入等を支援する制度の創設をお願いしたい。
(4) 障害児家庭の自己負担軽減
障害児のいる家庭においては自己負担の算定基準の基となる世帯収入に保護者の収入が含まれるため、保護者に重い自己負担が発生している。更に、自己負担額の設定が三段階だけになっているため、ある収入以上は高額負担となっている。自己負担額が段階的なきめ細かい設定になるように改善をお願いしたい。
(5) 福祉用具等のレンタル
患者の体に合った適切な福祉用具等の使用は、症状の増悪を防ぎ、介護時の事故防止の観点からも必要不可欠である。一方、筋ジストロフィーは病状の進行が早く、生活環境が急に変化するため、現状の給付(購入補助)制度のみでは対応できないケースが多い。そのため、やむを得ず体に合わない福祉用具での生活を送り、病状が進行してしまうことが多数見られる。このようなケースに対応するために、福祉用具等のレンタル給付を認めていただきたい。
(6) 家族介護支援
ヘルパーを確保できず、やむを得ず家族の介助で生活が成り立っている患者が多数いる。更に、介助のために離職する家族も多い。有償ヘルパーとして家族の雇用を認める等、家族介護への支援制度の創設をお願いしたい。
2) 医療的ケアを必要とする重度な在宅患者への支援の拡充
医療的ケアが必要な利用者を受け入れる事業所が大幅に不足している。医療的ケア児支援法が成立した現状、その趣旨に則った医療的ケアを含めた重度な筋ジストロフィー患者への施策を拡充していただきたい。
3) 福祉人材の確保
障害者福祉を担う事業所の人材不足は極めて深刻で、認められた支援量を利用できないことも多い。また、ヘルパーの高齢化も深刻である。福祉人材の育成、人材確保のためのあらゆる手段を講じるようお願いしたい。

4.地方公共団体等関係機関との連携による施策の実効性の確保
1) 大学への就学支援について
大学等の就学支援など厚生労働省において必要と認められた事業についても十分実施されていない現状がある。地方公共団体や文部科学省とも連携の上、その施策の実現を図っていただきたい。また、医療的ケア児支援法の対象を、高等教育機関に在籍する者にも拡大するよう図っていただきたい。
2) 就労対策の充実
障害者差別解消法改正法が成立し、民間事業者への合理的配慮が義務化されたが、現状として、事業所内の障害者トイレ設置等のバリアフリー化に消極的な事業所もある。障害者差別解消法改正法をできるだけ早く施行いただくとともに、バリアフリー化を推進及び利用可能な補助制度を活用するよう周知いただきたい。

5.治療・研究開発の促進
1) 治験と研究費の予算増額、支援強化
(1) 患者に負担の少ないアウトカムメジャーの開発
現在の治験プロトコルには、過度な歩行を伴う評価など、患者にとって苦痛を伴うものが多く含まれる。ウエアラブルで24時間、心電図や歩行距離を始めとする筋ジストロフィーに関係する10以上のアウトカムメジャーの研究を進めていただきたい。
(2) 民間企業への支援
採算が重要視される民間企業が希少疾患の創薬に積極的に取り組めるよう、希少疾患の創薬支援制度のさらなる充実をお願いしたい。
(3) 希少疾患の研究助成の拡大
神経筋疾患には様々な病型がある。現在、十分に研究が行われていない病型にも研究費の助成を拡大していただきたい。
2) 研究機関の充実、強化
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所をはじめとする研究機関の研究機能の充実・強化をお願いしたい。
3) 遺伝子検査の保険適応
(1) 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
外国で顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの臨床試験が開始された。今後、日本でも臨床試験が行われることが想定されるため、その確定診断のための遺伝子検査の早期保険適用をお願いしたい。
(2) 全塩基配列解析
筋ジストロフィーの遺伝子変異箇所は多岐にわたり、確定診断のために全塩基配列解析が必要な患者も多い。これについても保険適用をお願いしたい。
4) 治療薬や最新医療への保険適用
(1) 最新治療薬の保険適用
筋ジストロフィーの治療に対し治験段階まで進んでいる候補薬も多数出てきた。これらの中には高額な薬剤もあるが、患者の治療のためにも認可後、速やかに保険適用をお願いしたい。
(2) 補助人工心臓の保険適用拡大
近年、筋ジストロフィー患者および女性変異保有者に対してはリハビリテーションや呼吸管理(人工呼吸器を含む)の進歩により生命予後とADLの改善が見られる。一方、心筋障害は、これを併発した場合は従来の心筋保護薬による治療に限られ、患者の生命予後を規定する重要な因子になっている。また、エクソン・スキップ治療などの新しい治療の導入が進んでいるが、心筋への効果が確立されていないために今後の研究開発を待つ必要がある。
そこで、従来の治療では効果が期待できない心筋障害を持つ筋ジストロフィー患者および女性変異保有者に対して、補助人工心臓の保険適用の早期実現をお願いしたい。

以上

 

(以上、ホームページ運用チーム)