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デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する分子治療のこころみ

目次

  1. 要約
  2. ウイルスベクターを用いた遺伝子治療
  3. 再生移植治療
  4. 薬物治療
  5. おわりに

要約

筋ジストロフィーとは、進行性に筋肉が壊死・変性し、筋力がなくなってゆく病気の総称です。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)はもっとも頻度の高い筋ジストロフィーです。ほとんどが男児のみに発症しますが、その割合は男児出生約3300人に一人と言われています。

男性には1つ、女性には二つある、性染色体であるX染色体上には、筋肉の細胞(筋細胞)の骨組み(細胞骨格)をつくるジストロフィンという蛋白の遺伝子があります。遺伝子の異常で、ジストロフィンがほとんど作れなくなるのがDMDです。

ジストロフィンは筋細胞の骨格を保っているので、DMDでは筋細胞がその形を保てなくなり、容易に壊れるようになります。その結果、筋細胞は崩壊・再生を繰り返し、筋肉としての働きが出来なくなり、筋力低下、筋萎縮を来たします。DMDの症状は幼児期の起立・歩行障害から始まり、10歳前後で歩くことが出来なくなります。筋力低下による呼吸障害や、同じく筋肉で出来ている心臓の機能障害が死因になることが多く、患者さんは20歳程度で死亡されることが多かったのですが、最近は医療器具や薬物などの医学の進歩により30代、40代まで存命される患者さんもいらっしゃいます。

残念ながら、この病気の根本的な治療法はまだ発見されていません。しかし最近、分子生物学の進歩により様々な技術が治療に応用できるようになり、加えて筋肉の構造や機能、病気の成り立ちが解明され、全く新しい治療法が考案されるようになりました。

私たちはDMDの根治療法のためのいくつかの分子治療を考案、実現に向けた実験を進めています。みなさんに、私たちの行っている研究を中心に、筋ジストロフィー治療の将来への展望をご紹介したいと思います。性疾患と筋原性疾患では症状がどのように違うのか説明しましょう。