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エメリ・ドレフュス(Emery-Dreifuss)型筋ジストロフィー

病因、病態、病理

X連鎖劣性遺伝と常染色体優性遺伝があります。X連鎖劣性遺伝ではX染色体長腕(Xq28)に遺伝子座があり、最近その遺伝子がクローニングされました。またその遺伝子産物はエメリン(emerin)と命名され、6個のエクソンからなる2,147塩基からなる蛋白で、threonine phosphokinaseという酵素に似ています。その蛋白は細胞の中の核の膜(核膜)に局在することが明らかにされています。エメリンという蛋白の抗体ができていますので、抗体を使った免疫染色ができます。正常では核膜が染色されますが、患者さんでは染色されないので診断が容易となっています。

常染色体優性遺伝では遺伝子座は第1染色体長腕(1q21)にあり、ラミン(lamin A/C)という核膜の蛋白の遺伝子(LMNA)に変異があります。この蛋白の抗体で染めると患者さんの細胞の核も染まるので診断を確定するためには遺伝子診断が必要です。

臨床症状

X連鎖劣性遺伝、常染色体優性遺伝とも臨床症状はよく似ているといわれています。神経・筋疾患での関節拘縮は筋力低下の進行とほぼ一致するのが普通です。しかし本症では筋力低下は軽度であるのに、早期から肘、手、足関節に拘縮がみられるのが特徴的とされています。また頚部、脊柱の前屈も制限され、強直性脊椎症候群(rigid spine syndrome)との鑑別が困難なこともあります。事実私たちは以前に強直性脊椎症候群と診断した患者が後日生検筋を再検査して、エメリンが欠損したことを証明し、診断出来た例を経験しています。

本症の他の特徴は心伝導障害(PR間隔の延長と徐脈)で、完全房室ブロックを来します(不整脈が出て心臓が正しく働かなくなることです)。本症には突然死が多いのはそのためといわれています。定期的な心臓検査が必要で、異常が認められればペースメーカーを挿入します。ペースメーカーを使用すれば筋力低下は軽いので、生命的予後はよい病気とされています。