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治療法の研究は進んでいるのですか?

筋ジストロフィーの研究

現在も様々なアプローチのもとに、多くの研究が行われています。これらを一覧性良く分類して図にしたものが以下になります。

図の左側にある、"健康な人"は、健常者の方の筋肉が作られる過程を模擬的に描いたもの、一方で図の右側の"健康でない人"は、筋ジストロフィーの方において"健康な人"と比較してどういう風に筋肉が上手に作れなくなってしまうのかを示したものです。この二つを比較すると、違いが分かると思います。また、さらに図の右側では色々な治療法が筋肉を生成する過程のどの部分に作用するかをまとめたものです。これにより、個々の治療の違いが感覚的に理解できると思います。

それでは、上の図に出てくる各々の治療方法の詳細を以下に説明します。

1.遺伝子の変異部分を複製しないようにする方法

筋ジストロフィー患者は原因となる遺伝子変異を持っています。タンパク質を作るために遺伝子を複製すると、やはり変異したタンパク質が合成されてしまいます。

これに対して、変異部分のみを複製されないような措置を施すことにより、本来複製される筈の変異したタンパク質よりも、より正常に近いようなタンパク質を合成することが可能になります。

このようにして、完全ではないものの、少しでも正常に近いタンパク質を合成することにより、症状の改善が見込めることになります。

エクソンスキッピングがこの治療方法の代表例です。

エクソンスキッピングの説明図

2.筋細胞の懐死を抑制する方法

筋ジストフィーの直接的な問題は、変異した遺伝子が筋細胞の懐死を招いてしまうことです。ですので、遺伝子そのものを修復しなくても、この懐死を少しでも抑制することが出来れば結果的に症状は緩和します。

副腎ステロイドやプロスタグランジンD合成酵素阻害薬がこの治療方法の代表例です。

3.筋細胞の再生を促進する方法

人間には筋肉量を適正に保つために筋肉の発達を抑制するミオスタチンというたんぱく質があります。しかし筋ジストロフィー患者は筋肉が弱いのですから、このミオスタチンというたんぱく質の働きを抑えてしまえば、筋肉の発達が促進されることになります。

抗ミオスタチン療法がこの治療方法の代表例です。

4.新たな筋細胞を導入する

何らかの方法で正常な筋細胞を作り出してそれを体に取り入れることが出来れば、筋細胞の再生を行うことができます。

iPS細胞を用いた再生医療などがこの治療方法の代表例です。

iPS細胞による治療の説明図

5.遺伝子変異そのものを修復する方法(生体内ゲノム編集治療)

そもそも遺伝子変異を何かの魔法で正常遺伝子に変えることが出来れば、すべての問題は解決する訳です。

ベクターを用いた治療などがこの治療方法の代表例です。

生体内ゲノム編集治療の説明図

治験を行う上で必要になるもの

このような治療薬が一般に利用されるようになるためには、治験を行い効果と安全性を確認する必要があります。

しかし、治験を進めていくためには、治療薬以外にも多くのものが必要になります。

限られた治験の期間でどのような評価項目に注目をしてお薬の効果を確認するかも必要なものですし、治験をスムーズに進めるためには患者さんのリクルートをスムーズに進めるためのシステムも必要ですし、また患者登録データベースをきちんと整備することも非常に重要なものです。

希少疾患の治験とは、このような治験のためのインフラがあって、初めてより効果的に行うことができるものです。

患者さん、及び患者家族が出来ること

我々にとって根本治療が見つかることは、"一日も早く"の切なる思いです。一方で、我々、患者や患者家族が直接的に根本治療に向けて貢献できることは、残念ながらとても限られています。ただ、限られてはいるものの、決してゼロではありません。

まず、第一に、少しでも身体の状態を良くしておくことはとても大事です。理学療法を取り入れて、日ごろから身体に十分なケアをしておくようにしましょう。

第二に、前述の通り、治験を行い進める上では、患者登録データベースが整備されていることはとても大きな意味を持ちます。一人ひとりの、一つひとつの登録が集まってとても価値あるものになります。

最後に、患者家族が一丸となって色々な活動を行っていくことは、最終的には医師や研究者の方々の大きな励みになります。是非ともJMDAを中心とした、大きな輪を作り、この輪を広げていきましょう。