U.平成12年度調査結果の報告

3.
病弱養護学校で開発・工夫しているスポーツ種目


 病弱養護学校の体育担当者に対し、それぞれの学校で開発・工夫している運動(スポーツ)種目に関するアンケート調査を実施した結果、23校の病弱養護学校のうち全ての学校から回答をいただきました。
 各校より寄せられたスポーツ種目は合計64種目でした。
 スポーツ領域別にみると64種目の内62種目が球技種目であり、他の2種目は陸上運動領域の車椅子によるスラロームでした。
 球技62種目をアーモンド(1986)によって示された球技ゲームの分類システムにより、ネット・壁型(バレーボールやテニス、スカッシュ等ネットや壁を挟んでボールを打ち合う種目)、ターゲット型(ゴルフ、ボウリング等目標にボールを近づけたり当てたりする種目)、侵入型(サッカー、バスケットボールのように相手チームの領域に入り得点する種目)、守備・走塁型(野球、ソフトボールのように攻撃と守備が分かれる種目)の4領域に分類しました。
 各領域では、ネット・壁型の種目が22種目と最も多く、次いでターゲット型の20種目、侵入型の12種目、守備・走塁型の8種目でした。
 種目別にみると、卓球型が最も多く13種目でした。次いで野球の8種目、ホッケーの8種目、バレーボールの7種目、カーリングの5種目、サッカーの4種目などがみられました。
 ただし、一般的なスポーツ競技の方法とは異なったルールや用具を採用している種目も多く、他の種目の特性を加えたり、領域の異なるスポーツ同士を組み合わせたりしたものもあり、分類が難しい種目もありました。特に侵入型の種目では、サッカーと名づけられていてもスティックを用い、卓球ボールのような小型ボールを使用しており、実質的にはホッケー形式であるものが少なくありませんでした。ターゲット型は種目数も多く、ゲーム方法も多岐にわたっていました。
 各種目の工夫している点についてみると参加者の筋力を補うような工夫が多くみられました。用具面に関しては、使用ボールは軽く小さいもの、例えば卓球用のピンポンボール、練習用のゴルフボール、ユニホック用のプラスチックボール、風船等を使用する例が多くみられました。手に持つバットやラケット、スティックは軽い素材(バルサ材、発泡スチロール、プラスチック、グラスファイバー等)を使用した手作りの例が多くありました。また、野球の際に車椅子で転がるボールに対応するためにグローブの代わりに補虫網を使用しているなどの工夫もみられました。
 技術面では、活動範囲を制限するような工夫が多くみられました。例えば2次元平面での活動を主とした種目(ゴロバレー、ゴロ卓球)、参加者を複数にして一人の受け持つ活動範囲を小さくする種目(卓球バレー)、転がりすぎないようなボールの使用等です。車椅子使用者では、車椅子にスティックを取り付けてボールをコントロールしやすくする方法や、車椅子ごとボールにぶつかるためバンパーやプロテクターを取り付けて行うサッカーやバレーの工夫例もみられました。
 ルール面では機能段階の違いによる不公平さをなくすために、障害度によって投げる距離やポジションを変更したり、動くことのできる範囲(ゾーン)を区別したりすることで対応していました(ホッケー、サッカー)。また、使用ボールをくじによって決めるなど偶然性の要素をルールに取り入れている事例もありました。(別表参照)
(松原豊)

病弱養護学校の体育活動において開発・工夫している種目(代表例の抜粋)

領域 分類 種目名 工夫している点(用具【用】、ルール【ル】、技能【技】)













4人制バレー 【用】卓球ボールを使用、車椅子にバンパーを設置する
グラウンダーボール 【用】プラスチック製穴あきボールを使用
【技】車椅子に乗っての2次元平面での活動
バレーホッケー 【用】軟式ボール、オリジナルスティックの使用
【ル】障害の程度によるサーブ位置の変更
風船バレーボール 【ル】実施毎に検討、1回では返せない
石垣原バルサ卓球 【用】スティックをバルサ材で製作する
【ル】団体で行う、コート中央に障害物を置きボールの動きを変える
コーナー卓球 【用】軽い木製のラケットを使用、卓球台を2台使用する
【ル】卓球台のコーナーが陣地となる
テーブルサッカー 【用】卓球台に合わせて車椅子の高さを調節する
【ル】時間制(10分)の採用
卓球バレーボール 【用】障害の軽い子どもに対して打ちにくいラケットを使用する
【ル】個人に応じて特別ルールを採用する
ゴロピンポン
スカイピンポン
【用】オリジナル卓球台、視覚障害者用卓球ボールを使用する
【技】集団ゲームにより活動範囲を縮小する
ゴロ卓球 【用】穴あきボールを使用、ネットを使用しない
【技】中央両サイドに壁をつくって偶然性を出す
クッションバレー 【技】角材を台上におき偶然性を出す
ピンボールピンポン 【用】【技】卓球台に傾斜をつける
【ル】スカッシュ型のルールを使用する
バドミントン 【用】【技】シャトルを吊るして振り子状で打つ
転がしドッジボール 【用】トイを使用してボールを転がす
【ル】攻守交代する


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卓上ビリヤード 【用】専用ビリヤード台製作、オリジナルスティック、卓球ボールを使用する
【技】コートは床上に設定し、車椅子で活動する
わくわくビリヤード 【用】ゴルフボール、ビリヤードボール使用、トイを使用して転がす
ピンポンゴルフ 【用】バレーボール用支柱の穴、卓球ボール、発泡スチロール製スティックを使用する
マウンテンホール 【用】卓球台の中央に穴のあいたターゲットを設置する
【ル】時間制を採用する
【技】障害物を設定し、偶然性を出す
ゲートボール 【用】グランドゴルフ用ボールを使用する
【技】車椅子にスティックを固定し、ぶれを防ぐ
Pボッチャ 【ル】障害の程度によって投げる距離を変更する
パターカーリング 【用】グラスファイバーで軽量パターを作成し、ゴルフボールを使用する
【ル】障害の程度によって打ち出し位置を変更する
カーリング 【用】個人用ストーン、スティックを改良する
   タッパーとキャスターでストーンを製作する
【技】車椅子の回転を利用して打ち出す
射的 【用】ゴム鉄砲、吹き矢を使用する
コロコロボーリング 【ル】【技】傾斜台を使用、使用ボールをくじによって選ぶ(偶然性)



サッカー 【用】車椅子の前にプロテクターを装着する
【ル】【技】車椅子使用者と歩行者のプレイゾーンを分ける
ラインサッカー 【用】ゴルフ練習用の穴あきボールを使用する
【ル】ゴールキックは手を使用してもよい
車椅子ホッケー 【用】ユニホックの用具を使用する
【技】壁の跳ね返りを利用する、車椅子にスティックを固定する
ホッケー 【用】スティックは生徒が製作し、セラピーボール、軟式ボールを使用する
【ル】【技】進入禁止ゾーンを設定する
ピンポンアイスホッケー 【ル】【技】1畳のスペースで座位により実施する
フロアホッケー 【用】車椅子プロテクター、卓球用ボール、オリジナルフェンスを使用する






野球
桜式野球
【用】ティーボール用スタンド、虫取り網を使用し、バットの種類を増やす
【ル】野球盤のようなヒット、アウトのゾーンを設定する
   走塁は代走人形を引いて行う
スーパーベースボール 【用】傾斜台、卓球ボールを使用する
【ル】ゲートの通過によってヒット、アウトが決定する
キックベースボール 【用】バレーボールを使用し、車椅子にプロテクターを装着する
【ル】バントゾーン、アウトゾーンを設定する
野球ボーリング
ホッキュウ
【用】ピッチャー、バッター共スティックを使用する
【ル】走塁用ベースと守備用ベースを別に設定する
   向かい合ってボールを投げ合いヒット、アウトを判断する







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牛乳パックレース 【用】牛乳パックを利用してコースを設定する
車椅子テクニカルレース 【ル】コースを工夫してタイムレースを行う


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